男女平等の実現と女性活躍のための9つの視点|DHBR2020年4月号「女性の力」

    女性活躍や家事の分担、育メン、父親の育児休暇などなど、男女ともに働ける社会を目指しているニュースをここ数年でよく聞くようになりました。しかし男女平等の実現まではまだまだ長いと同時に、実現に向けてできることも多々あります。

    今回は男女平等の実現と女性活躍について詳しく知ることができる雑誌を紹介します。DIAMONDハーバード・ビジネス・レビューの2020年4月号です。「女性の力」をテーマに特集が組まれ、様々な識者が男女平等について現実の厳しさと実現に向けての手段を語っています。論文及びインタビューの数はなんと9つもあります。

    読んでみて、男女平等の実現までの道のりは厳しいんだなと実感します。先進国では企業や政治の世界はまだまだその段階ではないですし、途上国となると家庭においてさえ前時代的な男女不平等があるようです。一方で格差是正に向けて9つの視点から提案がなされています。

    それでは9つの特集を1つずつ見ていってみましょう。

    世界における女性の地位の現実と男女平等に向けてできることを解説

    特集1のテーマは「いまこそ、女性の力を解き放つ」です。著者はビル・ゲイツ氏の妻であるメリンダ・ゲイツ氏です。

    「男は仕事、女は家庭」という昔ながらの価値観は根強い

    日本より男女平等の実現が進んでいると思われるアメリカにおいても、「男は仕事、女は家庭」というステレオタイプなイメージがあるようです。ちょっと意外に思えますが、近代まで人類の生活自体がそういうものだったから、どこの国も同じなのでしょう。

    それよりも途上国の方が男女格差は深刻だと感じました。近代以前のように、仕事も教育も男性中心、女性は家事というだけではありません。レイプもあるし、妻は夫に逆らえない力関係があるとのことです。

    男女平等を実現するには世の中の仕組みを変えていく必要がある

    男女平等の実現に向けて、メリンダ氏は社会的制度からのアプローチを提言しています。一例を挙げると下記のような提言があります。

    • 育児・介護のための有給休暇を充実させる。
      →アメリカではこれらが法で保障されていない。つまり先進的な企業だけが取り組んでいる。
    • 官公庁、テクノロジー、学術、メディア、投資、企業の6業種に就く女性を増やす
      →これらの業種は社会基盤であると同時に、勢いと影響力があるからです。
    • テクノロジー系企業と協力して、アフリカ系やラテン系、先住民系の女性がコンピュータ系学位を取得したりインターンシップに参加しやすくする。
    • 株主や消費者、従業員などが圧力を加える
      • 株主が役員の選任に対して女性活用を促す。
      • 消費者はセクハラを行う会社から商品・サービスを購入しないようにする。
      • 従業員はセクハラを行う会社に対して、ストライキなど集団行動を起こす。

    社会全体という視点は重要だが、積み重ねも重要

    個々人が気を付けるとしても、日常の小さな行いが社会全体に普及していくには時間がかかります。メリンダ氏が言うように、仕組みを作ったり、みんなで行動したりして、社会全体で変えていく方が早そうですね。

    例えば、飲酒運転の罰則を厳しくし、それをメディアが報道することを考えてみましょう。こうすると人々は飲酒運転をしないように気を付けようとします。同様に、セクハラや男女差別を制度で禁止し、協力企業を集め、メディアを通して消費者や従業員に意識付けることで、社会全体という大きな視点から変えていける可能性はあると思います。

    人々の生活習慣は変わるものです。働き方改革で残業は減りましたし、ここ数年で育メンという言葉が登場しました。社会全体という視点で動いて行けば、徐々に人々の意識は変わっていくでしょう。こういう視点が大事なんだなと。

    男女平等の実現には100年以上かかる

    特集2のテーマは「世界の男女格差を表す6つのグラフ」です。統計データで男女格差を見ている論文です。

    2018年時点では、世界全体でのジェンダーギャップが68%とのことです。内訳としては、「教育水準」と「健康と生存」はそれぞれ95%、96%と高いのですが、「経済参加」と「政治」はそれぞれ59%、22%と全然低いです。

    「生存と健康」は世界のあらゆる国で高い数値を出しています。しかし「教育水準」となると、途上国では格差があります。アフリカでは60~80%の範囲の国があります。

    「経済参加」や「政治」ともなると、先進国・途上国ともに低い水準です。国によってバラつきが大きくもあります。

    今の延長線上では、男女平等が実現するまでに軽く100~200年はかかってしまうでしょう。ということは、他の特集論文で書かれている方法などで格差是正を行っていく必要があるわけですね。

    全社員が有給育児休暇を取れる社会を実現する

    特集3のテーマは「全社員が有給育児休暇を取れる社会を」です。

    著者はSNSのredditの共同創業者であり、現在は投資会社の役員をやっているようです。そんな著者曰く、テクノロジー系企業は人材争奪戦のために育児休暇を含む福利厚生制度を充実させているそうです。福利厚生の充実は人材獲得の話に出てくることがありますね。

    本文にこんな話があります。

    ソフトウェアのエンジニアであれ料理人であれ、家庭も家族も無事だと安心できれば、一番よい仕事ができます。

    もう家庭を犠牲にして仕事をする時代ではありません。本文には父親の育児休暇の話も出てきます。取得できて当然の権利としていますし、著者自身も父親の育児休暇を取得したことがあるとのことです。

    従業員に安心して働いてもらうため、男女ともに育児休暇を取れるようにするということが普通になりつつあります。仕事もプライベートも充実できる福利厚生制度について考えるべきときが来ているのでしょうね。

    ベンチャーキャピタルだからこそ女性活躍のためにできることがある

    特集4のテーマは「ベンチャーキャピタルが女性の進出に果たす役割」です。

    ベンチャーキャピタルだからこそできることもあります。例えば女性起業家に投資することです。女性起業家に資金と経営ノウハウを提供し、女性起業家が経営する企業を発展させるのです。

    また、女性経営者の方が収益性が高いという調査もあるようです。本稿によると、女性が創業もしくは共同創業した企業は、他企業よりも5年にわたる収益が10%大きかったとのことです。

    著者は女性経営者に活躍してもらうために、女性経営者や女性メンターのネットワークを構築することを提案しています。情報交換や相談ができる仲間がいると心強いです。このようにインフラ面の整備も大事ですね。

    法律、ビジネス慣行、文化模範の3つを変えることで男女平等を実現する

    特集5のテーマは「ハラスメントの悪循環をいかに断ち切るか」です。少し前に#MeToo運動が話題になったと記憶しています。

    セクハラの被害を侮ってはなりませんが、権力や社会的地位でねじ伏せられてしまう現実があると、本稿は指摘しています。

    セクハラは人格的ダメージとともに、経済的損失も与える。
    転職の可能性が6倍も高まり、多くはより低品質の好ましくない職場に替わる。
    ハラスメントを訴え出れば、退職しようとしない女性の多くが、給料カットや解雇などの経済的報復を受ける。

    本稿では法律、ビジネス慣行、文化模範の3つを変革せよと説いています。

    1. セクハラを罰する法律の制定
    2. 女性の労働を支援する団体(本稿ではタイムズ・アップという団体)が企業にセクハラやマタハラの是正を求める
    3. 子供の頃から教え込まれたステレオタイプな男女間を変えていく

    いずれも世の中の仕組みや価値観を変えていくことであり、他の論文・インタビューで言及されていることと共通していますね。3に関しては時間がかかるように見えますが、アニメやドラマなどのメディアコンテンツなら社会に大きな影響を与えられる可能性があると思います。

    金融リテラシーで資産形成して自信や勇気を付ける

    特集6のテーマは「すべての女性に自己実現のための資産を持ってほしい」です。アメリカでは、男女の資産額を比べると100対32という大きな差があるそうです。マイノリティの女性ともなれば、さらに大きな差があるそうです。

    マイノリティの女性に金融リテラシーを身に付けさせる

    本稿では金融業界で上級職に就いている黒人女性が、女性の金融リテラシーを高める方法について解説しています。著者は女性たちに下記のような働きかけをしているそうです。

    • お金に対するマインドセットを変えることで、資産形成を促す。
    • 401Kなどの制度を活用するように促す。
    • 一カ月10ドルでもいいから貯金する。できれば口座振替などで自動的に。
    • お金の話を最悪だと考えず、仲間内でクレジットスコアや貯金などについて話す。

    資産を持つことが自信や勇気につながる

    資産を持つことで、有事にも備えられ、自信や勇気、存在感にもつながるそうです。生活が苦しいほど貧しくては、ネガティブになって自分を低く見てしまう可能性もあります。金融業界の人ならお金や資産という観点からアドバイスして、資産形成を助けることで、自信を付けさせることができるのですね。

    私も多少は金融や会計をやっていた人間なので、これらの知識を解りやすく人に伝えることで、少しでもプラスにできるかもしれません。こういう小さなことでもいいからやってみようかな。

    女性の政治家を増やすことで、男女格差の是正や福祉の充実を期待できる

    特集7のテーマは「議会により多くの女性を送り込む方法」です。特集2の調査からは、最も男女格差があるのは「政治」であることが解っています。つまり女性政治家を増やすことも、男女平等の実現において重要な課題です。

    女性政治家が増えることで、妊娠・出産・育児などに関する制度や、男女格差を是正する制度が充実する可能性があります。社会的に優位な立場にいる男性だけでは気付かない視点もあるでしょう。

    しかし男性社会である政治の世界において、女性の候補者を当選させることは簡単ではありません。そこで本稿ではE-PACという女性の候補者を支援する団体を紹介しています。

    どの分野においてもメンターや支援者は心強いものです。男性社会なら男性はメンターや師匠を見つけやすいと考えられます。しかしそれでは男性ばかり有利になってしまいます。だから土台部分で男女格差をなくす必要があるわけですね。

    女性活躍には無意識バイアスの攻略が必要

    特集8のテーマは「無意識バイアスが日本の女性活躍を妨げている」です。メリンダ・ゲイツ氏の論文を解説しつつ、日本の状況に触れている論文です。

    人間には子供の頃から無意識バイアスが染みついている

    本稿では無意識バイアスという見えない存在が解説されています。家事の多くは女性が負担している夫婦が多いのも無意識バイアスの一つでしょう。バイアスは思い込みであり、無意識バイアスは無意識のうちに染みついている思い込みです。

    例えば男女格差がテーマであれば、無意識バイアスのよくある例は「男は仕事、女は家庭」のような昔ながらの価値観です。子供の頃から無意識のうちに染みついた、ステレオタイプな男女間がいくつかあるはずです。これが無意識バイアスなんですね。

    問題は、男女ともに無意識バイアスに従ってしまうことよりも、女性が無意識バイアスに縛られてしまうことなのだそうです。会議や採用、仕事・役割の分担において、無意識バイアスが働いていないか意識した方がよさそうですね。

    また、キャリアにおいても無意識バイアスが働いていないか考えた方がよいと思います。無意識バイアスがよく関わってくるのはこの辺かなぁ。

    無意識バイアスに関しては、測定するサービスが存在するようです。ANGLEという製品で、チェンジウェーブという会社が提供しています。

    PRODUCT | ChangeWAVE|株式会社チェンジウェーブ

    男女平等の実現に向けての日本の状況

    この論文では、女性の就業率や管理職比率、特定の職種における女性比率などのグラフが紹介されています。

    共働き世帯と専業主婦世帯の数は1990年代半ばには同じくらいになり、それ以降は共働き世帯の方が多くなっています。ここ10年くらいで差の開きが大きくなっています。

    一方で女性のパートタイム比率において、日本は40%近いです。ヨーロッパ諸国と比べてもかなり高い方に位置しています。管理職比率も12%と非常に低いです。アメリカは高い方で40%と。

    変わり始めたとはいえ、まだまだ遅れているのが現実ですね。OECDのジェンダー・ギャップ指数において153カ国中121位というだけのことはあります。政府のサイトに調査結果のまとめがあります。

    内閣府男女共同参画局

    それ以外に気になったことがあります。ITエンジニアの女性比率が19.3%もあるというのです。う~ん、こんなに女性多かったかなぁ。Webデザイナーも含めればこれくらいいそうですが、ITエンジニアだけだと10人に1人いれば多い方だというのが現場での実感です。新卒に多いのかなぁ。

    育児期間中の女性にも責任のある役割を与え、周囲が支援する

    特集9のテーマは「女性自身も変わらなければ真の男女平等は実現しない」です。男女雇用機会均等法の作成に携わった方の論文です。

    男女雇用機会均等法の制定には賛否両論があった

    男女雇用機会均等法の制定には問題が多々あったそうです。実は当時、女子保護規定というものがあり、女性の残業時間は週6時間以内かつ深夜残業は禁止という大きな制約がありました。男性にはそんな制限はなかったでしょうけど。

    となると、男女雇用機会均等法を作るには女子保護規定をなくさなければいけません。すると女性が無制限に残業させられてしまうことになります。それで反対意見が多かったそうです。法制度を作るためには、良い面と悪い面を考慮しなければいけませんね。

    無意識バイアスに縛られずチャレンジをしよう

    この論文でも無意識バイアスについて語られています。真剣にキャリアを築きたいなら、無意識バイアスに縛られてはいけないということです。いわゆるステレオタイプな男女間は勿論、遅くまで働いている人ほど会社に貢献しているという意識も無意識バイアスです。

    育児期間の女性に責任のある仕事を与えないなど、いわゆるマミートラックもダメです。時間の制限があっても難易度や責任が十分な仕事をしっかり割り当てればいいと思います。女性側も自ら無意識バイアスに負けず、積極的に責任のある仕事にチャレンジしてほしいと著者は書いています。

    私が以前いた会社では、子供が保育園に通っていて時短の女性がプロジェクト・マネージャーをやっていることもありました。勿論、保育園からよくお呼び出しがありましたが、周りがサポートすればよいのです。たとえ時短でも、実力や意欲にあった仕事を割り当てればいいし、そもそも仕事はチームワークですから支え合えばいいと私は思っています。

    とはいえ、仕事と家事・育児の両立は簡単ではありません。夫婦の協力も会社や同僚の支援も欠かせません。制度だけでなく、理解し合い協力し合う文化も必要ですね。

    終わりに

    9つもの提案があると一言でまとめられませんね。ならばこの中で自分にできることを探すのがいいかなと。

    私の場合はマネジメントをさせてもらえる立場であり、金融や会計の知識が多少はあるということから考えてみました。

    • 仕事の能力に男女差はないと考える。
    • 性別で見ることはせず、個人個人の個性で見る。
    • 金融リテラシーを雑学として教える。
    • 会計の知識を雑学として教える。

    ちなみに家事はちゃんとやっていますよ。家事を妻あるいは夫に一方的に押し付けず、分担し合うこと、そして手伝ってもらったらありがとうということはしましょう。

    みなさんもご自身の知識や経験を活かしてできることがきっとあるはずです。小さいことから始めて、周りに伝搬させて、世の中を動かしていきましょう。

    購入はこちらから

    DIAMONDハーバード・ビジネス・レビュー 2020年 4月号 [雑誌](特集1 女性の力、特集2 追悼 C.クリステンセン)

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    ITとデザインは強力な武器だ!と考えているプレイングマネージャー派ITプロフェッショナル。好きなものは経営戦略、ブランディング、マーケティング、会計、組織論。趣味はサイクリングと楽器。

    外資向けブランド戦略会社、金融向け経営管理ベンチャーと渡り歩いたが会社が経営難になって無くなる。今はIT系コンサルファームに居候中。

    自分が今までに経営とITという視点から学んだことを広く多くの人に発信していきたと考えています。

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